「お客さんが見つけた価値」で共鳴を増強
ブランドがストーリーを語り、お客さんとの深いつながりを築くようになって久しいですが、近年の戦略フェーズにおいてはナラティブ マーケティングが注目されるようになりました。
ナラティブは「語り」と訳されますが、自分語りのストーリーと異なる役割を持つため、ここでは「語られ方」と意訳します。
その語られ方を用いたナラティブ マーケティングとは、「お客さんが見つけた価値」を軸に戦略設計する手法を指します。それにより、個別のターゲット層に強く訴求できたり、市場に一体感あるムーブメントを起こすことが可能になります。CSVやパーパスなどの共創型の経営観点や、多様な価値観が存在するSNS時代に順応した手法と言えます。
「語られ方」を主軸にした戦略設計
皆さんもお客さんと話していて新たな気づきや学びを得た経験はあるのではないでしょうか?自分たちが思っていた訴求点とは大きく異なり、お客さんが商品サービスを使う中で感じた価値はとても有益なものです。その価値をどう表現・伝達していくかに着目し、戦略設計に活かすことで同じニーズや感覚を持つターゲット層への共鳴を増強していきます。
展開方法としては、キャッチコピーやキービジュアルに用いるようなミニマムなものから、ブランドのスピンオフプロジェクトのコンセプトに掲げるなどの取り組み・活動レベルのものまで想定されます。
尚、ストーリー型とナラティブ型の使い分けとしては、ストーリー型は自社の根幹的部分であるため大事な場所に据え置き、ナラティブ型は市場アプローチに用いると棲み分けしやすいかもしれません。
手 順
ナラティブ(語られ方)は概念であり、さまざまな業種において適したかたちで活用されています。そのため本来は決まった手法や手順などはありませんが、ここではイメージを沸きやすくするために根本的な手順として紹介していきます。
- [洞察・整理] 「語られ方」に着目し、切り口を整理する
- お客さんへのヒアリングやアンケートを実施
- 「語られ方」の洞察と整理
- [設計・実行] 適材適所の切り口で、より多くの人の琴線に触れる設計をする
- ターゲット層の特性や母数などを確認
- 適切なターゲット層とチャネルの選定
- 「語られ方」主軸での戦略設計・実施
- [計測・改善] 共鳴度を測り、ブラッシュアップしていく
- 効果の測定
- 新規お客さんへのヒアリングやアンケートの実施
- 新たな「語られ方」による補強で施策強化
実 例
対峙型のストーリーと、同化型のナラティブの組合せ
実際にナラティブ(語られ方)を取り入れた案件として、岡山の近藤建設興業さんのZEHリノベーション事業があります。ここでは『場所』にナラティブを活用しました。
同社が新たに取り組むZEHリノベーション事業。深刻化する地域の空き家問題に対し、進化する住宅性能・機能を駆使した新たな定義のリノベーション文化を根付かせていく取り組みを実施されています。
訪問営業などのアウトバウンド手法が時代に淘汰された住宅業界。通常の営業・広報活動と並行して、実際にリノベーションしたモデルハウスを地域活動の場として開放されました。現在、教室利用、宿泊体験などを通して、利用者主体で価値を紡いでいく場所として地域に浸透していっています。リノベーション検討者にとって、「語られ方」が活性した市場ムードは大きな後押しになるはずです。
まとめ
ナラティブは概念のため形が見えず難しく感じるかもしれませんが、まずはお客さんの声に耳を傾けてみてください(近況を尋ねる、質問をするなど)。ヒアリングやアンケートも良いですが、アイデアやヒントはリラックスしている時に出てくるものなので雑談がベストかもしれません。「そう言えばこの前…」みたいな感じでお客さんが語り始めたらチャンスです。
余談:
Mr.マリック氏の「ハンドパワー」「きてますきてます」は、ご自身ではなく観客から生まれたというのは有名な話です。
客「それは何ですか?ハンドパワーですか⁈」
マ「ハ? …ハンドパワー?です…」
客「今、きてるんですか⁈」
マ「…はい?」
客「きてるんですね⁈」
マ「…きてますきてます」
こんな感じだったのでしょうか?
驚きの渦中、皆が言い表せなかった感情を一人の観客が代弁し、それが公共の電波にのり一大ブームを巻き起こしました。これもれっきとしたナラティブの力なのではないでしょうか。
提 案
- 「語られ方」をチーム内共有し、ベクトル強化に役立てよう
- 2次施策として「語られ方」主軸で戦略を再構築してみよう
- 市場の反応に変化が生じたか観察してみよう
- 採用アプローチにも用いてみよう